俺様天使の助手になりまして

 さっきまでしがみついていた脚が、粒子のようなチリとなって消えていく。

 天使が、来てくれたんだ。ぴぃちゃんが知らせてくれたんだ。

 ……よかった。これでもう、あの子たちは大丈夫……。

「おい、おい、大丈夫か。アカリ、目ぇ開けろ。おい、しっかりしろ」

 切羽詰ったような声が聞こえる。

 頬に、腕に、温かいものが優しく当たる。

 だんだん痛みがなくなってきて、鉛みたいだった腕も足も軽くなっていく。天使に、癒されているんだ。

「あの……あの子達は?」

「あの子達? 俺が来たときには、誰もいなかったぞ」

「逃げてくれたんだ……そっか、良かった」

「ったく。家で大人しくしてろっつっただろうが! お前には、日本語が通じねえのか。何やってんだ!」

 癒されているおかげで、だんだん意識も感覚もはっきりしてくる。

 私はベンチに寝かされて、天使に膝枕をされていた。

 光輝くブロンドの髪。宝石みたいな瞳。

 眉間にしわを寄せて、超不機嫌そうな怖い顔をしている。

 この天使が、会いたくてたまらなかった人だ。

 リクトールに、やっと、会えた。
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