俺様天使の助手になりまして

 扉を開けて指を出すと、ちょん、と乗ってくれる。

 外に出るとすぐ、指から離れて自由に空を飛ぶ。けど、黙っていても私の行く方についてきてくれる。

 犬みたいに賢い。それはやっぱり天界の子だからかな。

 お散歩コースである山の上神社に向かう。

 夏祭りの間中飾られていた提灯は、既にない。相変わらずの長~い石段。上っていくだけで修業になるんじゃないかと、毎回思う。

 小さな祠に一円玉を入れて手を合わせる。でも、祠の中には竹刀も何も入れていない。もう、その必要はないから。

 石段の上に座って、空を見上げる。

 アクマ天使は、今頃何してるかな。

 女神の護衛と、あのちびっこ天使たちの相手をしてるのかな。

 指先で、唇を、そっと触る。

 あの時、キス、してくれたんだよね。私のファーストキス。

 記憶が消されてなくて、ほんとに良かった。

 まだ、好き。

 姿を思い出すと、胸がきゅぅっと締め付けられる。

「ね、ぴぃちゃん。これ以上好きになれる人、現れるのかな」
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