俺様天使の助手になりまして

「安心しろ。んなもん、誰にも見えねぇよ。お前だって誰にも分からねぇぞ」

「それでもヤなの! 私は純情な乙女なの!」

 必死に声をあげると、アクマ天使は舌打ちをして高度をグンと上げた。家が豆粒みたいになっている。これなら見えないけれども、風が冷たい。

「さ、さむい。サムイ。寒いよっ」

 ガタガタガタガタ震えていると、体の周りがふわっとした空気に包まれて、ほんわりと温かくなってくる。

 もしかして、何かやってくれたの?

 ぬくぬくと温かくて、風もゆるく頬を撫でるだけ。スピードは変わらないみたいなのに。

「ありがと」

「うるせぇからな」

 上下に動く白い翼が金色に輝いている。きらきらと鱗粉を飛ばしているかのように。

 長い時間飛んでいる気がするけれど、どこに行くのかな。帰れるのかな。妙なことに巻き込まれて、日常が壊れている。

 この先どうなるんだろう。


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