俺様天使の助手になりまして

「ふう、もう走らなくてもいいかな」

 速度を緩めて汗を拭く。

 朝から焦ったよ。まさかあそこにいるなんて思いもしないもの。

「おい、アカリ」

「あっひゃあぁぁっ!? な、何?? んぐっ」

 いきなり後ろから聞こえた低い声。さらにニュッと出てきた腕に、首の辺りをガシッと拘束された。

「は、離して」

 首が締められていて苦しい。

 腕をバシバシ叩いてジタバタしてると、少しだけ力が緩んだ。けれども、さらにドスの利いた声が耳の傍から聞こえてきた。

「何? じゃねぇだろうが。お前、先に行くな。無視すんな」

「はい? わ、私には、何の事だかさっぱり分かりませんが?」

 体が震えて、声も震えた。

 これでは、駄目だ。嘘がバレバレだ。いつ私に気付いたのか。先輩女子に鼻の下を伸ばしていて、そんな素振りもなかったのに。

「お前のことだけは、何処にいようが、俺は分かるんだ。無駄な抵抗すんな。恋人ってことは、お前の関係者全部に植え付けてある。いい加減覚悟を決めろ。でねぇと、既成事実作るぞ」

「は?」

 理解したくない言葉が、アクマ天使の口から飛び出した。

 既成事実って、何それっ。

< 45 / 264 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop