俺様天使の助手になりまして
「ふう、もう走らなくてもいいかな」
速度を緩めて汗を拭く。
朝から焦ったよ。まさかあそこにいるなんて思いもしないもの。
「おい、アカリ」
「あっひゃあぁぁっ!? な、何?? んぐっ」
いきなり後ろから聞こえた低い声。さらにニュッと出てきた腕に、首の辺りをガシッと拘束された。
「は、離して」
首が締められていて苦しい。
腕をバシバシ叩いてジタバタしてると、少しだけ力が緩んだ。けれども、さらにドスの利いた声が耳の傍から聞こえてきた。
「何? じゃねぇだろうが。お前、先に行くな。無視すんな」
「はい? わ、私には、何の事だかさっぱり分かりませんが?」
体が震えて、声も震えた。
これでは、駄目だ。嘘がバレバレだ。いつ私に気付いたのか。先輩女子に鼻の下を伸ばしていて、そんな素振りもなかったのに。
「お前のことだけは、何処にいようが、俺は分かるんだ。無駄な抵抗すんな。恋人ってことは、お前の関係者全部に植え付けてある。いい加減覚悟を決めろ。でねぇと、既成事実作るぞ」
「は?」
理解したくない言葉が、アクマ天使の口から飛び出した。
既成事実って、何それっ。