俺様天使の助手になりまして

「そうすりゃ、お前だって、少しは、らしく振舞えるだろう?」

 アクマ天使が私の両手首を掴んで、背中にまわした。これじゃ、抵抗も身動きもできない。

「ちょ、待ってよ」

 大きな手だから、私の腕なんて二本一緒に持てるらしく、もう一個の手が顎を支えた。

「黙れよ」

 メガネがギラッと光っている。

 口がへの字に曲がっていて、三年女子に見せていたにやけ顔と全然違う。

 天使体じゃないのに、振り解こうにもびくともしない。男子の力って、普通に強いんだ。

「離してよっ」

 掴まれた腕ごとぐっと抱き寄せられて、アクマ天使の唇の辺りが目の前にきた。

 嘘でしょ、本当にするの? ここは道で、みんなが見ているのに! 

 それより何よりも、これって、初ちゅーの危機じゃない! 

 ゆっくり顔が近付いてきている。

 この状況は、一体どうしたらいいの? 叫ぶ? 叫べばいいの?? 

 でも叫んだら、却って口を塞がれそうな気がする。どっちにしろ、ピンチだ。

 香奈~~と、心の中で助けを求める。香奈だったら経験豊富だ。こんなときどうするのか、知っている筈。

 けれど、頭の中の香奈はにっこり可愛く笑うだけで、何のアイデアもくれない。
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