俺様天使の助手になりまして

 教室の入り口で、ようやく手首は解放された。

 ずっと掴まれてたところが、すっと軽くなる。

 学校に来るだけで、こんなにぐったり疲れるなんて、人生初だ。ため息を吐きつつ、机の上に通学鞄を置いた。

「あかりぃ~、おはよぉ~」

 挨拶しながらばらばらと寄ってきたみんなに、ぐるっと囲まれた。

 先頭切って走り寄って来たのは、香奈だ。サラサラの髪から甘いピンクローズの香りがふんわり漂ってきて、今日も完璧な美人ぶりだ。かわいすぎて、女同士なのに胸がキュンってなる。

「待ってたよぉ、朱里ぃ」

 私の手をぎゅっと握ってくる香奈の顔が、何だかちょっと哀しそうに見える。

「おはよう、香奈。みんなも、おはよう。朝からみんなしてどうしたの?」

 オズオズと聞くと、香奈は私の体を支えるようにして、椅子に座らせてくれた。

「朱里、落ち着いて。話、聞いてあげるよ?」

「へ?」

「気持は分かるよ。やっぱショックだったんだよね」

「は?」

「腹が立つのは分かるからさ。洗いざらい話しなよ、スッキリするよ」

「え?」

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