俺様天使の助手になりまして

 三百六十度、方々から話し掛けられる。

 その声が神妙な感じで、泣いてもいいんだよって言う子までいる。でも、その子の方が泣きそうな顔してるから、まじまじと見てしまった。

「ね、一体何のこと?」

「もぉ~朱里ったら。隠さなくてもいいよ。彼、浮気してたんでしょ?」

 私は、香奈の顔をじーっと見たままで固まった。

 えーっと、この場合の彼って、やっぱりアクマ天使のことだよね。何でそんな話になってるのかな。

「朱里、昨日からおかしかったじゃない。彼のこと避けたりして」

 そう香奈が言うので、昨日の行動を思い返した。だって昨日は、仕方がないじゃない。

「三年生の人でしょ。あの茶髪の。あの人綺麗だけど、見境がないって有名だよ。陸人君は、朝も話し掛けられて、そんで嬉しそうに笑ってたそうじゃない!」

 叫ぶように言ったのは、少林寺ちゃん。拳を作ってぶんぶんと振っている。

 少林寺ちゃんというのは、もちろんあだ名で、四月の自己紹介の時に小さい頃から少林寺習っているって言ったから、それであだ名になった。手を振っているだけなのに、ビシッと決まって、格闘家の迫力がある。
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