俺様天使の助手になりまして

 朝のアクマ天使は、確かにニヤけていた。

 みんなの隙間から、自席に座っているアイツを見る。

 悔しいくらいに涼しい顔で本を読んでいる。みんなに浮気男に決定されているの、知らないんだろうな。

 あんな風に静かにしていると、確かにイイ男に見える。赤点評価とはいえ、一応天使だ。存在感があるっていうか、とにかく目立つのだ。

「えーと、誤解だよ。何もないよ?」

「えー、だって、泣きながら走ってたって聞いたよ?」

 後ろにいる子が、私の顔を覗きこむようにして見るので、少し仰け反って避けた。

「橋渡り切ったとこで、ハンカチで顔覆ってたって」

 後ろから覗き込んでる子が、涙の痕を探すように、頬の辺りをじろじろ見ている。

「あ~ん、可哀想な朱里。ちゃんと謝って貰えたの?」

 横にいる香奈が、優しく頭を撫で撫でしてくれる。

「そうだよ! 抱き締められておでこにキスされただけで誤魔化されちゃダメだよ! 今後の為に、ちゃんと、ぐっさりと釘を刺しとかないと!」

 興奮しているのか、バン!と机を叩きながら少林寺ちゃんが叫ぶ。その言葉に、みんながうんうんと大きく頷いた。

「キ、キスって。あの、えっと、それってさ……」
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