俺様天使の助手になりまして

 ガタンと勢いよく立ちあがった私を見る香奈のびっくり目が、瞬きを繰り返している。

「ゴメン香奈。アク、違う! リクトが来たら、朱里は外に行ったって言っておいて!」

 返事を待たずに慌てて弁当を仕舞って、昇降口に向かって走る。慌てるあまりに足がもつれて、階段で転びそうになってひやりとする。

 下駄箱で靴を変えるのももどかしい。

 早く! 早くあそこまで行かないと! でないと、あれは。あれは──。

 外に走り出るとすぐに、ありったけの大声を出して叫んだ。

「瑠璃菜!! そこから離れて!!」

 瑠璃菜は「誰?」って言いながらキョロキョロした後、私に気付いてくれた。

 精玉は、瑠璃菜のいる木のてっぺん辺りでふらふらと浮かんでいる。

 黒っぽい羽で、玉の周りだけが薄ぼんやりと暗く、そこだけ雨雲があるみたいだ。

 愛の精玉はキラキラ光ってキレイだったのに、アレは不気味なオーラを放っている。

 アクマ天使に訊かなくても分かる。あれは絶対に、悪玉の方だ。

「よりによって、アイツがいないときに~」

 もしもアレが憑いてしまったら。イヤな予感しかしなくて、背中がゾワゾワして変な汗が出てくる。

 怖い。

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