俺様天使の助手になりまして

「なあに、朱里。どうしたの? 離れるってこの木から?」

 木の幹を見て不思議そうに首を傾げ、理解できないって顔でのんびりしている。

 だから、こっちに来て!って、一生懸命手招きしてみる。

 見えないんだから、分からないのは当たり前なんだけど。ピンク色の袋を抱えて首傾げてる姿は、すごく可愛いんだけど。そこにいると危険なんだよ~。

 玉は憑くチャンスを探しているのか、瑠璃菜のいる木の上から離れようとしない。何の資質なんだろうか。

「瑠璃菜、いいから。ちょっとこっちに来て。できるだけ、そっと。ね?」

「そっと? あはは、朱里ってば可笑しいよ。分かった、ゆっくり歩けばいいんだよね?」

 やっと動き出してくれた瑠璃菜の後を追うように、精玉もふらふらとついてくる。

 何かきっかけがあれば、すぐに憑いちゃいそうだ。どうしたらいいのか分からなくて、焦る。

 喉がからからに渇いて、手に汗が滲んでくる。足が震えるのを無視して、精一杯何でもないふりをして瑠璃菜と同じように笑った。

 だけど私がチラチラ上を見るから、瑠璃菜もつられて仰ぎ見る。

「ねえ、上に何があるの?」

 そう言って折角歩いていたのに止まってしまう。
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