俺様天使の助手になりまして

「うん、分かった」

 空を見上げてきょろきょろしている瑠璃菜を背中にまわし、精玉を睨みつけながらゆっくりと横歩きをする。

 刺激しないように、そっと。

「ああ! お前、それ卑怯だぞ!」

「ギャハハハ。何とでも言えー! ほらぁゴオォール!」

「うぎゃー!」

 意味不明な声を上げて笑っている声が、グラウンドの方から聞こえてくる。

「あ、先輩だ」

 後ろにいる瑠璃菜がぼそっと呟くと、精玉がぴくんと反応した。角度的には横向きだったのが、ゆっくり回転して、正面を向き始める。

「何で、こっちを向くの」

 それが不気味すぎて、自分ながらに情けない声が出る。

 どうして悪玉が瑠璃菜を狙うのか。さっきよりも黒さが増してるように見えるのは、気のせいだって思いたい。瑠璃菜の何に反応してるんだろうか。

 アクマ天使の無愛想な顔がちらつく。こんな時に、どこで何してるの。まったく頼りにならないんだからっ。

 でも。アレは、私にしか見えないんだ。

 今は、私が瑠璃菜を守らないと! 

 意を決して、左手の甲をピシピシと叩く。

 今頼りになるのは印だけだが、ちっとも反応しない。

 もしかしたら呪文があるのかもしれない。発動条件を聞いておけばよかった。
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