俺様天使の助手になりまして
「竹刀出てこい! 武器出て来い!」
思いつく限りの言葉を小声で言いながら、左手の甲をピシピシ叩いたり撫でたりしてみる。
だけど印はちっとも光らないし、駅前商店街の時みたいに熱くもならない。
「何で出ないの?」
「朱里? ね、どうしたの、大丈夫? 蜂、もういなくなった? てか、ほんと何も飛んでないよね?」
瑠璃菜の手が私の制服の袖をギュッと掴んで、ツンツンと引張る。説明のしようがなくて、口ごもってしまう。
どうしたらいいの。
「よし! タカヤ、ジュースのおごり決定な!」
「分かってるよ。仕方ねぇなあ」
サッカーが終わったみたいで、グラウンドの方からだんだんと先輩達の声が近づいてきた。
「ね、ね、朱里。虫が近くにいないなら、もういいかな。あ~ん、行っちゃう。ごめんね、ありがとね、朱里」
後ろからそわそわした声がして、同時に袖が引っ張られる感触が消えた。
「あ、ダメ今動いたら。瑠璃菜待って」