眼球
【彼は考える】

それらは敷地、空間のようなもので、私のレンズを玄関先に「403」などと書いた表札を吊り下げて、のうのうとちゃぶ台を広げ、プライバシーという名の菓子で茶柱でも立てているのではないかしら。

私は貸し家の大家、又は空室のホテルルームのようなもので、入れ代わり立ち代わる住人に内装、外装を削られる苦渋の毎日がこれから始まるのではないか。
もしや私の住人は

「疲れてしまいました。さようなら。」

などという手紙を机の引き出しに隠し、部屋の中でドタバタと暴れ回る神経衰弱者なのではないか。


それとも時既に遅し…私自身、403の悪霊に祟られてしまった後なのではなかろうか。
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