眼球
終戦記念日
このような具合に極度の被害妄想及び加害妄想、過度の自己陶酔さえ空想させてくれた異質な世界大戦は常に彼に毎晩付き纏い…そしてのしかかる。
否、どちらかというと缶蹴り遊びに近いや知れぬ。それも極度に夢幻的な…。

彼は抜群にステキでブキミな虫を追い掛けることで、今夜もまた戦後時代を生き抜くことを身につけた。そして遂に理想卿を発見し、見事に辿り着く。


虫一匹いない荒野に風が吹く。
虫がわんさか湧いた獄中に風が吹く。


そのド真ん中に寝そべり、耳を澄ます。



ニヤア。


彼は小さい頃に好きだったTVアニメ(黒猫が黄色い鳥を追いかけ回していたような)を思い出し、そうしているうちに少しずつ笑った。

これではまるで恋愛さながら。追い掛けては失い、失っては追い掛ける、真の輪廻転生劇場ではなかろうか。


『泣ける!悲劇のヒロイン愛を知る!』

そんな宣伝文句を尻目に彼は
「そういえば…初恋の相手は誰でしたかなあ。」

と両目のレンズをしきりにゴシゴシと磨き上げた後、眠気眼を閉じたり開いたりしながら

「そうだ……そうだったんだなあ。」

と幾つかの異性を浮かべ、また垂直天井をぼうーっと眺めたのであった。


ぼうーっと。ただ眺めたのであった。
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