僕ハ無窓ノ居室デ無限ノ虚構ヲ夢想スル
大安吉日ではなかったせいか、父さんの機嫌はイマイチってところ。



控え室には、母さんと私と、テキパキとヘアメイクを施してくれる美容師さんの三人。


父さんは着いて早々、


「落ち着かん」


と言って、そそくさとタバコを吸いに行った。


我が親ながら、どうしてあんなに落ち着きがないのだろう。


さすがに口には出さなかったが、母さんは私の眉尻が下がったのを見て、考えが読めたらしい。


「ああ見えて照れてるのよ」



すかさずフォローが入ったところは、長く連れ添った夫婦だけのことはある。




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