僕ハ無窓ノ居室デ無限ノ虚構ヲ夢想スル


「出来ましたよ〜」



目を閉じて色々考えていたら、美容師さんの声が頭の上から降ってきて、私はそっと目を開けた。



「…わぁ」



正面の鏡の中には、花嫁がいた。



「……綺麗ね……おめでとう」


少し涙声になった母さんが言う。


泣くのはまだ早いよ。


私は笑った。


「お父さん、呼んでこなくちゃ」


母さんがハンカチで目許を押さえながら笑った。





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