【番外編】好きの海があふれそう
恋多き娘の恋にショックを受けてあたしに助けを求める海琉もめちゃくちゃ可愛い。



あたしは、そんな海琉の手をベンチに座りながら握った。



「あっという間に陽鞠も大きくなって、すぐに彼氏とか連れてきちゃうかもよ~」

「大きくなるのは嬉しいけど~…。寂しいよ~…」



そこに、陽鞠がきょとんとした顔で入って来た。



「パパ寂しいの?」

「寂しいよ~」

「陽鞠がいるから泣かないで!」



陽鞠がそう言ったら、海琉がすごく嬉しそうな顔をした。



顔溶けてる…。



あたしにもそんな顔したことないのに…。



陽鞠に嫉妬だ!!



「海琉! あたしもいるんだけど!」

「何張り合ってんの杏光…」



陽鞠を抱っこする海琉に若干拗ねながら、夕方になって家に帰った。



海琉が夜ご飯の仕度をしつつ、間の時間にお風呂を洗う。



家事は当番制だけど、妊娠中はあたしの分まで海琉がほとんどやってくれる。



「代わりに出産してくれるんだから、俺にもできるところはやるに決まってるじゃん」っていうのが海琉のスタンス。



愛を感じます。



夜ご飯の時間には、今日も陽鞠が嫌いなにんじんとの格闘。



海琉が甘く味付けしてアレンジしたにんじん。



でもそんなに簡単に食べるわけがない…。



口をとがらせて、いやいやしてる。



「陽鞠ちゃーん? 知ってた? にんじん食べると目がキラキラになるんだよ~」



あたしが言った。



陽鞠が、あたしの方を心細そうに見た。



「…ほんと?」

「ほんとだよ~。ほら、ママの目もキラキラしてるでしょ?」



そう言うと、陽鞠があたしの目をじっとのぞき込む。



「ほんとだ!」

「でしょ? じゃあ陽鞠も食べる?」

「うん…」



陽鞠はそう言って、恐る恐るにんじんを口に入れた。



海琉と顔を見合わせて微笑んだ。



陽鞠は、一口食べて、あたし達を見た。
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