✻秘密は甘くて危険な味✻
「何ですか、寮長」
「実は、お前達の部屋当てだけ俺が決めといたから」
「はぁ…そうですか」

コソッと耳打ちされた言葉に、興味なさげに答える歩稀。
僕は意味が分からず首を傾げた。

「つまり僕達の容姿が関係してるんですよね?」
「ビンゴ!お前達はファンが居る程の人気者の上に美少年だ。今は男でも襲われる世の中だから、向こうの寮長とも話し合って大丈夫な奴等と同じ部屋にしといた」

寮長の説明に頷く歩稀に続き僕も頷く。
パーマの掛かった赤い髪を指で弄りながら、何かあれば直ぐに連絡しろよ!と言って2階に上がって行った。

「この名前、今日出会った嫌な奴じゃない?」
「…まっさかぁ〜」

紙を見ながら聞いてきた歩稀の言葉に、僕は笑って誤魔化した。
いやいやいや、絶対にない…筈。
僕がお世話になる部屋の住人の名前を一応確認する。
学年は1つ上らしい。
名前は南田奏馬(みなみだそうま)

「同じ名前なんかそこら中に居るから絶対違う」
「僕は同じ名前の人に会った事ないけど?」
「“ほまれ”って名前自体珍しいの!じゃなくて、違う“そうま”の人かもしれないって話」
「まぁ、明日には分かるから良いけどね」

ニヤリと笑った歩稀に、僕は気付かなかった──。
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