✻秘密は甘くて危険な味✻
「お、終わったぁー!」

何とか21時迄に荷造りを終えた僕は、勢い良くベッドにダイブする。
一足早く終えていた歩稀は、ベランダに椅子を置いて優雅に珈琲を飲んでいた。
高校での寮生活にも慣れて来たばかりなのに…。
チラッと歩稀を見る。

出会った中学時代、僕は既に男装してたけど、歩稀だけが僕の女である正体を見破った。
自分はゲイで、男しか好きになれないから安心してと…。
そこから毎日歩稀と過ごすようになった。
同じ学校を受験して、部屋まで同室にしてもらったのに離れ離れになるなんて。
3か月とは言え不安しかない。
幸いにも、部屋は隣同士だから良かった。

「春…」

いつの間にか部屋の中に戻って来た歩稀に呼ばれ、僕は静かに体を起こす。
自分のベッドに座る歩稀と向き合う。

「着替えとお風呂は気を付けるようにしなよ。何かあったら連絡して、行けたら行くから」
「うん」

素直じゃない言葉に頷く。
歩稀なりに心配してくれていると分かっているから、僕は嬉しくてエヘヘと笑う。
女だとバレずに過ごさなきゃ…。
僕は静かに決意を固くした。
< 13 / 16 >

この作品をシェア

pagetop