哀 夏 に 、
ポケットの中が震える。
無気力なまま通話ボタンを押した。
「夏弥おまえいつ来るんだよー、みんな待ってんぞー」
電話口の向こうから騒がしいいつもの声が聞こえた。
この集まりが楽しくて、どんどんこの時間を優先させていた。
けれど今はそんな気分になれなかった。
「…ごめん、今日やっぱいけねえ」
「なんだよ、いつもは彼女すっぽかしても来るだろ?」
ゲラゲラと笑う声、この中に俺はいた。
最低だ、ほんとうに。
離れていけば離れていくほど修復が不可能になっていくそこの逃げ場で、彼女の扱い方を間違えていた。
「…むり、気分じゃねえ」
ブツ、自分から切って音が途切れる。
また沈黙が訪れるそこで、頭を自ら電柱にぶつけた。
「…ッて、」
痛えよ、ほんと、バカみたいに痛い。
でもこれ以上に冬優は痛かったんだ。