哀 夏 に 、
片手に持ったスマートフォン、無意識に写真を開いていた。
アイスで手がべとべとになって困ってる姿。
俺のベッドで疲れ果てて寝ている寝顔。
夜の帰り道、楽しそうにカメラに向かっている笑顔。
見返せば見返すほど、後悔が押し寄せて自分を殴りたくなる。
気持ちが薄れていくことに向き合えばよかった。
写真を見返せば、どれだけ自分が好きだったかを思い知らされる。
なあ、どんな気持ちだったんだよ。
何も言わずに見送って、何も言わなくても俺が欲しいものを買ってきて、電話に出た俺に「また呼ばれたんだ」って笑ってたこと。
その違和感になんで気づかなかったんだ。
…違う。気づいていた。
甘えていたんだ。目をそむけていた。
何も言わないから、終わらせることも、続けることも、自分では選ばなかった。
「別れ」の原因をつくりだしたのは俺なのに、「別れ」の言葉を俺は言わせたんだ。
「…、くそ、」
おせーんだよ。遅いんだ、
全部。全部、自業自得だ。
傷つけた心はもう二度と戻ってこない。
あの笑顔も、好きの言葉も、いとおしく呼ばれる名前も全部。