哀 夏 に 、
視線は交らない。
いつもこちらをみないのはきみで、でも最後はわたしだ。
見れない、だってもう、そう決めたから。
「…冬優、」
呟かれたその名前が、たぶんもう最後で。二度ときみの口からその名前を聞くことは、ないんだね。
「さすがにもう、耐えられないや」
はは、乾いた笑いがなにもない、明るくもない空の下に響く。
こんな時に笑えるなんて、ほんと、馬鹿馬鹿しいね。
きみがわたしを置いてどこかへいくこと。
その行き先を言うことがなくなったこと。
こっちを見てくれなくなった細長い切れ目も。
わたしに触れることのない大きな手のひらも。
言葉がなくても、伝わるんだ。
ひとつひとつの仕草、言葉、行動。
わたしのことを想う気持ちがなくなっていくこと。
好きだってことは行動でも伝わらないのに、
ずるいね、ぜんぶ、まるわかりなんだ。
「たえ、れない」