哀 夏 に 、




涙は流してはいけない。
弱い女で終わりたくないんだ、最後まで、笑っていたかった。

こらえて顔をあげる。


その表情に、どんな感情があるのかは、わからなかった。


きみのこと、わかりたかった。
でも、わかりたくなくなったのは、いつからだろう。


ずっと、気づかないふりして逃げてた。

きみはずっと前から、わたしへの気持ちをどこかへやってしまった。



「…ごめん、」


黙っていたその口からこぼれた言葉が、
狡いね、今までで一番、酷い言葉だ。



一歩、また一歩、立ち止まったきみから離れた。
距離が遠くなるわたしに、もうきみは手を伸ばしてはくれなかった。


「好きだったよ、わたしは、ずっと」


無理やり口角を上げる。最後はあのころみたいに、笑って終わりたかった。

私を映す瞳のまんなかが揺れていた。


幸せだった、最初は。気付いたら、苦しいだけだった。

これ以上気付かないふりをして隣にいることは、もう私にはできない。



「バイバイ、」


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