哀 夏 に 、
駅のほうへ振り返って、私は歩き出す。
きみの瞳に最後にうつる私は、笑えてた?
きみは最後までちっとも笑ってくれなかった、けどそうさせたのは私だ。
振り返らなかった。
君は何事も無かったように家に足を向けているのか、そこに突っ立ったままなのかなんて、知りたくはなかった。
「…っ、」
溢れる涙と一緒に、わたしの想いも全部落ちてしまえばいい。
残らないで、全部、消えてしまえばいい。
こんな苦しいのなら、好きになりたくなかった。
でも、恋だった。
初めて話したあの日からずっと、わたしはこの人のことを好きになるって思ったの。
一番、愛していた。
きみの心が離れていく度に、どうすればこっちを見てくれるかばかり考えていた。
好きな気持ちは届きにくいのに、離れていく気持ちはすぐわかってしまうなんて、やっぱり恋って残酷だ。
大好きだった。
気づけば一方通行だったけど、それでもわたし、きみに出会えてよかった。