哀 夏 に 、
まんまるの月が雲から顔を出した。
大丈夫、わたしは、強くなれる。
いつか苦しくて愛おしかった思い出に、なれるから。
そのときまでもう少し、
きみのことを好きだったこと忘れなくてもいい?
夏が好きなきみと、冬が好きなわたし。
正反対だったふたりのことを、
ふたり一緒に過ごしたことを、きみのこころのかたすみも残しておいて欲しい。
「…なんて、無理かなあ」
哀しく響くひとりごとが、夏の夜に溶けて消えた。