いつからだろう。
ふたりでアイスを買いに行かなくなったのは。
いつからだろう。
――彼の気持ちが、もう自分の元にはないと思うようになったのは。
燃えるように熱い夏と、ぬくもりを分かち合う冬は、たしかに惹かれあったはずだった。
わかりたかった。わかってほしかった。わかりあいたかった。
でも、いつのまにか、ふり向かない彼のことを、わかりたくなくなっていた。
『もうはやく、夏から抜け出したいよ』
それは、最後までかすかにくすぶりながら残っていた、お互いを想う気持ちだったのかもしれない。
だけど、別れる。
だから、別れる。
恋をするということは、ひとりの人間と向きあうということ。
それを、頬を撫でる風のように静かに、夏の夜空のように寂しく、教えてもらいました。
季節の狭間でひとり切なくなったとき、ふと読み返したい。夏の終わりにそんなお話と出会えて、とても幸せです。