✽新✽魔王様と暁の姫〜月は夜明けの花を永久に想う〜
それでもやる気になれば、何とかなるものだと少年は思った。雨で視界は良くないが、目の前には夜明け色に輝く城がある。

「あ!ルシュラとクゥちゃんだ」


少女が嬉しそうに名前を呼ぶ。

少年二人が慌ててこちらに駆け寄り、片方の少年が少女を優しく抱きしめる。その手は冷たく震えていて。


「ーー心配したんだからな。リシュに何かあったら僕は……」


「……ごめんね。ルシュラ」


少年の頭をよしよしと撫でる少女。


その隣にいた赤茶の短髪の少年がやれやれと肩をすくめる。もう慣れているからなのか、あまり驚いた様子もない。それから自然に、何の躊躇いもなく手を差し出した。 


「歓迎するぜ。俺はクオイ・ロゼだ。よろしくな」

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