お ま じ な い
「よし、行こ」


最後に制服のリボンを結んでプールバッグを手に取ったセツナが、更衣室のドアを開ける。


プールサイドに残った水が、裸足の足を冷やす。


「そういえばさ、おまじないはどうなってんの?」


問われてサクノは口元を微かに綻ばせた。


4日間のうちに、スマホデビューしたアラキから連絡先を教えて貰ったり、数学の補講で同じ班になったりと、胸を躍らせる出来事がたくさんあったのだ。


「……順調、だと思う」


「ふーん」


嬉しそうに校舎へ続くドアを開けるセツナに、サクノは怪訝な顔をする。


おまじないはサクノのおまじないであって、セツナの願いを叶えるものではない。


「……私もサクノの願いが叶えばいいと思ってるんだよ」


セツナの言葉に、サクノは一瞬セツナの顔を見つめて、それから体操服の入ったトートバッグを握り締めた。


「ありがとう」


「……サクノは律儀だなぁ」
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