お ま じ な い

「……聞こえなかった?嫌だって言ったの」


「……え」


セツナはゆっくりとプールサイドにしゃがみ込んだ。


セツナの赤い唇の端がにぃ、と上に持ち上げられる。


「サクノは本当に鈍感だなぁ」


目の前で起きていることが、なんでもないかのようにセツナは嗤う。


温かったはずの水はいつの間にか凍えるほどに冷たく、それがサクノの勘違いなのか、実際に冷たくなっているのか、サクノには分からなかった。


ただ顎を震わせ、セツナを見上げる。
< 15 / 24 >

この作品をシェア

pagetop