お ま じ な い
「セツナ!セ…ぶ、たすけ、て!おね…ぁい!!」


「ねぇ、サクノ」


頬杖をつき、ひどく落ち着いた声でセツナはサクノの名を呼ぶ。


サクノの顔は水が涙か鼻水か、分からなくなるほどぐしゃぐしゃになっていた。


「私もね、叶うといいなって思ってたよ。サクノのおまじない」


その言葉を最後に、サクノはプールの底へと沈んだ。


サクノは足元に、自分を引っ張る深い闇を見た。


闇がサクノを引きずり込んでいるのだ。


藻掻けば藻掻くほど、ゴプリと体の中の空気が口から這い出でる。


助けてと叫ぼうが、家族を想って泣き喚こうが、サクノの声を聞ける者は誰一人としていなかった。


徐々に息が苦しくなって、サクノは自分の感覚が冷えていくのを感じた。


死に誘われたサクノが最期に見たのは、ゆらゆらと朧気なセツナの笑みだった。
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