お ま じ な い



謝らなくていいのよ。


サクノが死んだ次の日、セツナを呼び出した担任が言った言葉を思い出す。


1年前、サクノの死は事故だと処理された。


セツナは驚いて助けられなかった、と。


サクノの死体が浮いたプールの傍に座り込んだままでいたセツナを、大人たちは丁重に丁重に扱った。


セツナはたった1人の親友を失った哀れな少女になったのだ。


「可哀想なサクノ」


薄暗く、誰もいない教室でセツナはぽつりと呟いた。


サクノの死からちょうど1年である今日は、プールだった場所に花が手向けられた。


セツナももちろん教師らと共に追悼を行ったが、胸を締め付けられることも拳をにぎりしめることもなかった。


セツナはサクノの席に座る。


正確には、今は違う生徒が座っているが、サクノの机には、サクノが使う以前から彫られていたコンパスの穴があることをセツナは知っていた。


死んでまで自分に付き纏うのか、とセツナは冷笑してガツンとサクノの机を蹴った。


こうしていつまでも自分の傍にサクノが過ごした跡があり、思い出されることが癪に触る。
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