お ま じ な い
「シラユキ、お前この間の小テスト学年1位だったぞ」
投げかけられた声に、サクノは視線を上げた。
次の授業を担当する先生が、準備のために先に教室に来ていたのだ。
「ほんとに!?」
セツナの明るい声がその場の温度を上げる。
しかし、先生は苦笑いをして首筋を搔いた。
「そうか、お前ら2人ともシラユキだったな。サクノの方だよ」
ピクリ。
セツナの人差し指が微かに跳ねる。
サクノがそっとセツナの顔を窺うと、セツナの表情は堅く曇っていた。
小テストの後、手応えがあったと喜んでいたセツナを知っていただけに、サクノはおろおろと視線を彷徨わせる。
素直に喜ぶのもはばかられたし、取ってつけたように励ましても、セツナのプライドを傷つけるだけになるだろう。
「お前毎回上位くい込んでくるし、今回に至っては満点だぞ。シラユキ用に問題難しくせにゃならんかなぁ」
先生は黒板に解説用の図を書き込みながら、軽口を叩く。
曖昧に笑うしかないサクノは、居心地の悪さに意味もなく指先で人形を弄んだ。
セツナはそんなサクノを見てふ、と表情を和らげる。
「やだなぁ先生。そんなことしたらサクノしか点数取れなくなっちゃうよ」
「セツナの方のシラユキはもう少し頑張ろうか。それ、おまじないだかなんだか知らないけど、うつつを抜かしてると夏休み開けテストで痛い目見るぞ」
「抜かしてませーん。それにおまじないやるのはサクノだし」
「はいはい、女の子はそういうの好きだもんな。サクノの方もないと思うけど、赤点とかはやめてくれよ」
「頑張ります」
今度は自然に笑えた。
セツナの機嫌の悪さも一瞬だったようで、サクノはほっと胸をなで下ろした。
神社のどこに人形を埋めるか、二人で話し合っているうちに3限目開始のチャイムが校内に響いて、サクノは人形をそっと鞄の中にしまった。
投げかけられた声に、サクノは視線を上げた。
次の授業を担当する先生が、準備のために先に教室に来ていたのだ。
「ほんとに!?」
セツナの明るい声がその場の温度を上げる。
しかし、先生は苦笑いをして首筋を搔いた。
「そうか、お前ら2人ともシラユキだったな。サクノの方だよ」
ピクリ。
セツナの人差し指が微かに跳ねる。
サクノがそっとセツナの顔を窺うと、セツナの表情は堅く曇っていた。
小テストの後、手応えがあったと喜んでいたセツナを知っていただけに、サクノはおろおろと視線を彷徨わせる。
素直に喜ぶのもはばかられたし、取ってつけたように励ましても、セツナのプライドを傷つけるだけになるだろう。
「お前毎回上位くい込んでくるし、今回に至っては満点だぞ。シラユキ用に問題難しくせにゃならんかなぁ」
先生は黒板に解説用の図を書き込みながら、軽口を叩く。
曖昧に笑うしかないサクノは、居心地の悪さに意味もなく指先で人形を弄んだ。
セツナはそんなサクノを見てふ、と表情を和らげる。
「やだなぁ先生。そんなことしたらサクノしか点数取れなくなっちゃうよ」
「セツナの方のシラユキはもう少し頑張ろうか。それ、おまじないだかなんだか知らないけど、うつつを抜かしてると夏休み開けテストで痛い目見るぞ」
「抜かしてませーん。それにおまじないやるのはサクノだし」
「はいはい、女の子はそういうの好きだもんな。サクノの方もないと思うけど、赤点とかはやめてくれよ」
「頑張ります」
今度は自然に笑えた。
セツナの機嫌の悪さも一瞬だったようで、サクノはほっと胸をなで下ろした。
神社のどこに人形を埋めるか、二人で話し合っているうちに3限目開始のチャイムが校内に響いて、サクノは人形をそっと鞄の中にしまった。