お ま じ な い



それからサクノの周りでは奇妙なことが起こり始めた。


シャーペンを使っている最中に、突然持ち手にヒビが入り人差し指を切ったり、腰を掛けたパイプ椅子のネジが急に外れ、その場にしりもちをついたり。


掲示物が風で剥がれ、画びょうが腕を刺したこともあった。


ひとつひとつが小さく、勘違いかとも思われたが、あまりにも頻度が多い。


「最近、体調も悪くて」


人形を埋めた日から、なんだか頭が霞んで重い気がするのだ。


移動教室の途中でセツナに相談すると、彼女は


「夏バテしてるんじゃないの?」


と言って、からからと笑った。


しかし、夏バテにしては食欲もある。


むしろ暑さが食欲を加速させているくらいだった。


「じゃあ変なことが起きるのは?」


「偶然。それかイベント」


「イベント?」


「サクノに何かあった時いつもアラキ助けてくれてるの気づいてない?仲を深めるためのイベントっしょ」


思い返してみれば、手を貸してくれたり保健室についてきてもらったり、アラキとの接点は増えた気がする。


それは確かに人形を埋めた日から始まっていた。


「サクノ鈍感。嫌味とかにも気が付かないタイプだよね」


「そんなこと……」


サクノがもごもごと言い淀んだ時だった。


ビシッという音と共に、サクノの左側にあった窓ガラスが割れ、破片がサクノとセツナに降りかかった。


2人は反射で腕を上げ、細い悲鳴を漏らしてその場にしゃがみ込んだ。


何が起こったのだろう。


サクノがゆっくりと顔を上げると、動きに合わせて細かいガラスがパラパラと制服の上を滑り落ちた。


顔を見合せたセツナはサクノの影になっていたためか、ほとんど傷がなかったが、サクノは破片をもろに受けて、左腕に数箇所赤い線が走っていた。
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