お ま じ な い
「ほか、怪我ねぇの?」


会話をしないのも気まずいからか、アラキがサクノに問いかける。


「大丈夫。腕もそんなに酷くなさそうだし」


「よかった。……顔とか可愛いから傷つかなくて」


「…………」


「…………」


真っ赤になったサクノは、思わずアラキを見上げた。


手の甲を口元に持っていったアラキと視線が合う。


そのアラキの顔も夏の暑さだけではなさそうな赤が乗り、2人はくすくすと笑みを零した。


「夏のせいだ」


「そうだね、暑いせい」


本当は何が2人をそうさせるのか、お互いに分かっていたが口には出さなかった。


互いを意識しながらも、他愛ない会話を続けて保健室の前に着く。


さすがにアラキが次の補講に遅れては申し訳ないので、サクノはここまでで構わないと断り、アラキもその提案に素直に従った。
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