溺愛音感
ハナ、イケメン社長に拾われる
一つ、ボタンをかけちがえると、全部かけちがえてしまうように、
ツイてないときは、とことんツイていない。
たとえば――、
浮気した挙げ句、別の女性と結婚した元婚約者に再会して、
見ず知らずのイケメンにダメ出しされて、
路上で演奏していたら酔っ払いに絡まれて、
難易度超高い曲をリクエストされて、
バーで俺様王子様に遭遇して――、
「でも、イイコトもあっただろう?」
目を開ければ、イケメンが一匹。
ブラウンがかった髪に、きれいなアーモンド型の目はちょっと垂れ気味で、左の目尻には色っぽいビューティーマーク……ホクロがある。
甘く、年齢不詳の童顔。
口角を上げて微笑む様は、完璧のひと言に尽きる。
まさに王子様。
しかし、この王子様には重大な欠点が一つある。
そう……、
「俺のように完璧な飼い主に拾われるなんて、滅多にないことだぞ? 光栄に思え! ハナ!」
とんでもなく、俺様だ。