溺愛音感
三口で平らげたわたしを見て、雪柳さんが目を丸くする。
「そんなに天ぷらが好きだったのか……」
「ううん、初めて食べた。でも、好きかも」
「柾にリクエストすればいい。料亭並みのクオリティのものが食べられるはずだ」
「そうする」
(マキくんが作るなら、絶対に美味しい……)
リクエストの参考にするため、雪柳さんの頼んだ天ぷら盛り合わせの種類をじっくり観察する。
(海老はマストでしょ。あの葉っぱみたいなのは何だろう……あとで調べよ。黒いのは、キノコっぽいなぁ。マイタケかな? 緑の棒みたいなのはピーマン、ナスかな……)
「ハナ、ほかにも気になるものがあるなら、食べていいぞ?」
「ほんとっ!?」
雪柳さんに促され、遠慮も忘れて気になっていた緑の葉っぱを食べてみた。
衣はサクサク、中身はパリパリとしっとりの中間。
食べた瞬間、爽やかな香りを感じる。
知っているようで、知らない味わいだ。
(なんだろ、コレ……?)
「それは、大葉だ。青じそともいう」
「しそ? 食べたことあるけど、ぜんぜんちがう。飾りとかスパイス的にしか使わないのかと思ってた……」
「マイタケも美味いぞ」
「マイタケ、香りがいいし歯ごたえもあって好き!」
「そうか。遠慮せずに食べていいぞ」
「ありがとう!」
「どういたしまして」
雪柳さんは、なぜかふっと笑ってわたしの頭を撫でた。
「あの……?」