溺愛音感
独占欲むき出しの言葉は、愛を語る甘い言葉よりも、深く、重く心に響く。
何か言えと促すように唇をなぞる指を掴み、わたしとはちがう、骨ばった男の人らしい手をしげしげと眺め、その手首に唇を押し当てた。
手のひらを合わせ、そのまま指を絡めると、マキくんがシーツに縫い止める。
自重を使ってわたしを巧みに押さえつけ、緩やかに拘束しながら身体中にキスを施していく。
余裕がないと言ったくせに、じれったくなるほど執拗に。
その上、身勝手な命令を口にする。
「ハナ、鳴き声を聴かせろ」
「や……」
「イヤ? いまさら遅い」
「ん、うーっ」
イヤイヤと首を振るわたしに苛立ったのか、余計に執拗な愛撫を加えてくる。
声を上げたくないのは、恥ずかしいからとか、イヤだからとかじゃなく、怖いからだ。
比較対象は一人しかいないが、あまりにもちがいすぎる感覚に、戸惑いを通り越して恐怖すら覚える。
理性を手放した瞬間、自分がどうなるかわからない。
「強情だな……。ハナのためにも、時間をかけたほうがいいと思ったんだが……しかたない」
何がしかたないのだと考えることはできなかった。
「え、あっ!」
何の前触れもなく訪れた圧迫感に息が止まり……ある事実を確信した。
「ま、キく……まえ……?」
「話はあとだ」
「え? ……ぐっ」
容赦なく突き上げられ、目の前に火花が散った。
堪えていた声は悲鳴に近い嬌声となって喉からほとばしる。
爪先までジンジンと痺れる圧倒的な快感は、これまで経験したことがない。
もしも、一度でも経験していたなら、夢うつつだとしても、憶えていないなんてあり得ないと思った。
信じられないほどの快感にもみくちゃにされ、マキくんが落ち着きを取り戻し、一時休憩を許された時には、わたしは半ば放心状態だった。