溺愛音感
(お腹……空いた……でも、動けない……)
わたしがマキくんから解放されたのは、昼近く。
そこから気絶するように眠りに落ち、目覚めた時には日が暮れていた。
マキくんも、さすがに疲れたのか熟睡中だ。
絡みつく長い腕と足が若干重いけれど、それがかえって心地よかった。
無意識にわたしの身体を這う手に、欲望は感じられない。
が、しかし。
(一生分した感じ……病み上がりのくせに、体力ありすぎ……立見さん、なんの点滴打ったの……しかも、これがあと六日続く……)
思わず、心の中でボヤく。
(こんなことなら、旅行に行くって言えばよかった……)