溺愛音感
「……っく……」
感謝の言葉を伝えようと思うのに、開いた口から漏れたのは嗚咽だ。
しゃくりあげるわたしの背を軽く叩き、言い聞かせるように耳元で囁く。
「プロだろうとアマチュアだろうと、上手いヴァイオリニストは、数えきれないほどいるが……俺は、ハナのヴァイオリンが好きだ」
いまのわたしにとって、それは一番嬉しい言葉だった。
愛しているとか、好きだとか言われるよりも、何十倍、何百倍も嬉しい言葉だった。