溺愛音感

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マキくんが、オケの練習に行くと言い出したのは今日のお昼。
完全復活したマキくんと一緒にミツコさんの八百屋へ顔を出したのがきっかけだ。

泊まりがけの旅行はせず、家でまったりすることにしたので、久しぶりに料理の腕を揮いたいと言い、マキくんは大量の野菜を購入。
ミツコさんと料理談義で盛り上がり、すっかり意気投合した。

そこへ、常連さんやご近所の魚屋さんやお肉屋さんの奥さんも加わって、井戸端会議ならぬ八百屋端会議が開かれることに。

旬の野菜を使った各ご家庭のレシピはもちろん、子どもや孫たちのおもしろエピソードに、旦那や嫁の愚痴まで。

さまざまな話題が飛び交う中、ミツコさんがいつまでも結婚する気配のないヨシヤのせいで、かわいい嫁や孫の顔も拝めずに終活するハメになりそうだと嘆いた。

いろんなお店やお宅へ配達に行くのに、仲良くなるのはおばさまばかり。最近、いっそうオケの活動に熱心だけれど、いい雰囲気の相手はいないのかとわたしに訊いてきた。

毎回、弾くだけで精一杯なわたしには、オケの人間関係を観察する余裕がない。

残念ながら「わからない」と正直に答えたら、なぜかマキくんが「自分がオケの練習を見学して、ヨシヤの様子を観察してみよう」と密偵役を買って出たのだ。