溺愛音感
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「じゃあ、今日はここまでにしようか! お疲れ様~! 次回までに、できればおさらいしておいてねー」
約二時間の練習の終わりを告げる友野先生の言葉で、団員たちはそそくさと帰り支度を始める。
椅子を重ねて片付けたり、床に軽くモップをかけたり。
ここぞとばかりに友野先生を捕まえて、アレコレ質問攻めにする熱心な団員もいる。
一方で、練習の後に、一杯ひっかけてから帰るのを楽しみにしている人もいる。
「俺たちも、帰るか」
「うん」
今夜は、マキくんがいるので、ヨシヤを待つ必要はなかった。
「三輪さん、お先に失礼させていただきます」
友野先生と話があるらしく、まだ帰らないという三輪さんにマキくんが挨拶する。
「ミニコンサートの件はヨシヤくんから連絡がいくはずだから。友野くんも誘って『Adagio』へ飲みに行く約束、忘れないでね? 柾くん」
「はい。楽しみにしています」
三輪さんは、マキくんとすっかり仲良くなったらしい。
「それから、ハナちゃん。いい返事、待ってるよ。また来週ね?」
「はい。お先に失礼します」