溺愛音感
「…………」
たったいま聴いたばかりの言葉が、信じられない。
「コンクールが終わるまで待つなんて、お断りだ。返事は?」
畳みかけられ、勢いに押され、流されるまま返事をする。
「う、ん」
「うん、じゃないだろう!」
「……Oui?」
「ここは日本だ。日本語で言え!」
恥ずかしさと嬉しさと、意地悪な俺様への苛立ちで、頭の中はぐちゃぐちゃだったけれど、すべき返事は一つしかなかった。
「……はい」