溺愛音感
ハナ、俺様の独占欲にニヤける
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一週間ぶりのレセプショニストのアルバイト、今夜の担当は大ホールでの小学生向けの吹奏楽コンサートだった。
プログラムには、アニメや映画、遊び歌なんかの楽しい曲目が目白押し。
ちょっとした音楽教育も兼ねていて、クイズの時間があったり、みんなで一緒に歌ったり。
いつもはしんと静まり返っているホールに、笑い声や歌声が響いていた。
終演後、スポンサー企業のマスコットのシールやメモ帳などを子どもたちに手渡し、アンケートを回収して、仕事は無事終了。
鼻歌を歌いながらスタッフ用の更衣室に引き上げると、先に仕事を終えた美湖ちゃんがいた。
「おつかれさまでした~! ハナさん」
「おつかれさま、美湖ちゃん」
「演奏はもちろん良かったですけど、子どもたちの反応がかわいくって、癒されましたね~」
「うん、みんな楽しそうだったね」
お互いに感想を言い合いながら、着替えを終えて更衣室を出る。
「あれ? 今日はヴァイオリンの練習行かないんですか? もしかして、もうやめちゃったとか……」
美湖ちゃんが、リュックサックだけという身軽なわたしの恰好に気づいて首を傾げた。
「ううん、やめてないよ」
三食おせんべい付きに釣られ、俺様王子様と同居生活を始めてから、自由になる時間は音楽室でのヴァイオリンの練習に費やしている。