眩むような夜に、
午後七時、気乗りのしない待ち合わせ。私は、公園のベンチに腰かけて、目の前の景色をぼうっと眺めていた。
うだるような暑さだった。お世辞にも綺麗とは言えない苔が浮いた池に、ダイブしたい、なんて、暑さのあまり血迷ったことを思った。ブレーキをかける理性なんて、いっそ残っていなければよかったのに。
もしも私が池に落ちて、苔まみれになったら。それを見たあいつは何を思うだろう。嫌な顔をする?嘲笑する?心配……は、ないかな。いっそ頭がおかしくなったと思われてしまえば、ある種の心配はしてもらえるかもしれない。
そんな、不毛な妄想が実現することはないだろう。
中学の頃から付き合っていた彼と、高校は別々になった。離れていても心はつながっているから、なんて、今思い出すととんでもなく恥ずかしいセリフを吐いていたのに、あえなく破局。原因はあいつの移り気だ。偶然、あいつと知らない女のキスシーンを目撃したときは吐き気がした。神様は意地悪だ。
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