眩むような夜に、
「……放課後、うちの高校の前まで来たことあったでしょ」
そう言われて、思い出す。まだ幸せだった、あの頃。幸せが壊れてなくなることがないと、信じて疑わなかったあの頃。
「ひとりだけ他校の制服で目立ってたから、誰待ってんのかなーって見てて。それで、その子が待ってたのがクラスメートってわかって、びっくりした」
私は目を見開いた。まさかそんなところを見られていたとは思わず、顔の熱がぐんと上がる。同時に、あの頃の私は本当にあいつしか見えてなかったんだなぁ、なんて、指差して嗤ってやりたくなる。
「あいつの顔見た瞬間、君がすごく幸せそうに笑うから、あいつのこと羨ましい奴めって思ってたよ」
聞いているだけで恥ずかしくなるようなセリフを、よくもまあすらすらと。なんて思って彼を見ると、一応照れてはいるらしく、うっすらと頬が染まっていた。つられて、私もさらに赤くなる。