眩むような夜に、
「それなのに、しばらくして、あいつが他の女といるの見てさ。別れたのかなって思って、そのときは君だけが気がかりだった。けど、……あいつの、よくないうわさ聞いたから」
よくないうわさ。明言は避けられているけれど、十中八九、あいつの二股のことだろう。新しい彼女、なら何も問題はなかったのに、そうじゃなくて悪いうわさが流れているということは、時期がかぶっていたのかな。
幸せだと思っていた思い出が、本当はそうじゃなかったのなら。いったい、あいつはどれだけ私を傷つけたら気が済むのだろう。
「だから、つい、スマホ見た。そのとき、君のメッセも見つけた」
さっきの不穏な告白が、実は浮気調査のためのものだと知り、私は呆気にとられる。だって、あんなに警戒していたのに、蓋を開けたらそんな理由で。
「……つい」
思わず復唱すると、彼はしょんぼりとこちらを覗き込んだ。
「うん。……怒る?」
その様子がなんだか可笑しくなってきて、私はくすりと笑った。
「怒らないよ、別に」
責める気には、不思議となれなかった。