眩むような夜に、
「諦めないといけないんだって押し殺してきた気持ちだから、今こうしてんのも夢みたいなんだけどさ。でも、夢で終わらせる気なんてないから」
彼が、距離をずいと詰める。うしろに下がることもできない私は、どんどん大きくなる自分の心臓の音が、彼にバレてしまわないかと焦っていた。
「ずっと君のとなりにいたい。だから、あいつと別れる理由、俺にして」
「……!」
そのとき。突然、視界が真っ白に染まり、星屑が弾けてちらついた。
そっと、頬に柔らかなハンカチが当てられた。そこではじめて私は、涙があふれていることに気がついた。彼のほうを見ると、「あっ、これまだ使ってないやつだから!」と、何も言っていないのに焦り出す。そんな彼がおかしくて、私はまた笑った。
「……口説き文句がへたくそ」
「手厳しいな」
上手に甘えられない私を、彼は笑って許してくれるのか。
そう思うと、真っ暗だった目の前が、急に眩しくなった。
──それでも、私の好きは、苦しいだけじゃなかったの。
まだ傷は痛むけれど。切ない想いは、この夜の中にしまい込んで。
……この夜が明けたら、ちゃんと前を向けますように。目を瞑って、そう祈った。
fin.