眩むような夜に、
……これは、俗に言う、ナンパだろうか。数秒遅れて、そう理解した。
特段驚いたりはしなかった。日常茶飯事、というわけでもなかったけれど、のぼせた頭では、うまく驚けなかった。普段なら、もっと取り乱すし、それでもこういうのには取り合わない主義なので無視を決め込むところだった。そう、普段なら。
今日は、必要以上に暑いから。暑さのせいで、頭がショートしていた。
「暇じゃない……。ひとを、待っているので」
気がつけば、そう言い返していた。そっとしておいてほしいのに、そんな私の気持ちを無視して私の世界に入ってきた侵入者に、いらだっていた。
彼は、わけ知り顔でこちらを覗き込んだ。それが、私の神経を逆撫でした。
何も知らないくせに。何も、知らないくせに。……なんて、思っていたのに。
「ふぅん?でもやっぱり暇だよね。だって彼氏、来ないでしょ」
「……え」