眩むような夜に、

なんで。なんで、知ってるの。


「すっぽかされた?ひどい彼氏だね」


「──っ、すっぽかされてなんかない!」


思わず、噛みつくように言い返した。喉の奥がカッと熱くなる。思ったよりも大きな声が出てしまい、我に返った私は、気まずくなって、そっと目を伏せる。


あいつのことを悪く言われることが嫌だったのか、それとも、彼の言うそれを肯定することが嫌だったのか。どちらにせよ、結果が変わることはないのに。


「……ないよ、まだ」


せめてもの抵抗で、小さく口を動かした。それが、今の私の精一杯だった。夢を見ていたい私の、ちっぽけな悪あがき。


けれど、現れた彼は、諦めきれずに抱いていた淡い希望を、いともたやすく打ち砕いた。


「でも、もう時間過ぎてるよね。それとも、これから来る?」


「…………」


午後六時、をとっくに過ぎて、もうすぐ九時を指そうとしている時計の針。だんだんと夜色に染まっていく街。一向に来る気配のない待ち人。


図星だった。


当てずっぽうじゃないんだ。彼は確信を持って言っているんだ。
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