カラダで結ばれた契約夫婦~敏腕社長の新妻は今夜も愛に溺れる~
「そうだ、清良はパスポートを持っているか?」

おもむろに尋ねられ、慌てて記憶を呼び起こした。

「えっと……もう期限が切れていると思います」

最初で最後の海外は、高校の修学旅行だった。十代の頃だから、もうとっくに期限切れだろう。

「期限どうこうより、まず苗字を変えなきゃならないだろう」

「あ」

そうだった。氏名や本籍が変わったのだ。変更の手続きをしなければ。

「すぐにとは言わないが、済ませておいてくれ。いつか本場の中華を食べに行こう」

さらりと言いのけた総司に、清良は「え」と目を丸くする。

本場……ということは中国に? この忙しい彼に、旅行をするような時間が取れるのだろうか?

「……お休み、もらえるといいですね」

「休みまで取らなくても、半日あれば充分だろう。北京や上海程度なら、三、四時間で行ける」

「……そ、そうですか……」

どうやら彼の中で中国はちょっとそこまでお出掛け程度の距離らしい。

そういえば今日だって、ワシントンで会食と言っていた。彼にとって、食事のために海外へ行くのは普通のことなのかもしれない。

きっと自家用機だからセキュリティチェックや搭乗手続きなどの待ち時間もショートカットできて楽なのだろう。

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